2017年3月28日火曜日

2015年7月に発生したSM-2爆発のはなし

 画像:CNNの記事より

 すこし前の話ですが、2015年7月18日に行われたスタンダードミサイル2発射試験にて、発射直後に爆発するという事故がありました。前々から気になっていたのですが、ちょっと調べてみたのでまとめです。
 僕は壊滅的に英語ができないので、変な理解で書いてたらごめんなさい。艦や兵装等についても素人なので、そのあたりも間違ってたらごめんね。



 2015年7月18日に米国大西洋岸で行われたスタンダードミサイル2 Block3A(Standard Missile-2、以下SM-2)ミサイルの発射試験において、発射直後にSM-2が爆発するという事故がありました。発射を行った艦はアーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦のDDG-68 ザ・サリヴァンズ(USS The Sullivans)です。
 爆発による負傷者は報告されていませんが、小規模な火災が発生したとのことです。
 数週間後に掲載されたニュース記事では、ザ・サリヴァンズの修理におよそ$100k(当時のレートで約1250万円)を要するとのことです。爆発によるダメージは上部に集中しており、艦の構造に及ぶ影響は無かったとのことです。
 事故後、ザ・サリヴァンズは大西洋側の海軍基地で修理を受けており、事故後1ヶ月程度で修理は終わるようです。


 ザ・サリヴァンズはフライト1という、アーレイ・バーク級の初期に建造されたグループです(現在まで、フライト1, 2, 2Aの3種類が就役しており、現在フライト3が計画中です)。フライト1では前部甲板にミサイル発射機が29セル、後部甲板に61セルあり、このSM-2は前部左側の発射機から発射されたようです。
 アーレイ・バーク級のSM-2は垂直に発射されるため、この高さであれば、前部甲板の直上で爆発したということになるはずです。距離的には艦橋部分の直近ですが、おそらく大半の艦橋要員は直接爆発を見ることはなかったはずです(もちろん爆音には晒されたでしょうし、閃光も見えたはずですが)。
 手元にある資料によれば、アーレイ・バーク級のマストにはHF, VHF, UHFの各種アンテナと、赤外線光学系が搭載されているようです。
 アーレイ・バーク級は艦橋構造物が鋼製のため、多少の熱には耐えられるようになっています(過去の火災事故の教訓で、耐熱性が強化されています)。一方、マスト部分はアルミで作られているので、「ダメージは上部に集中している」というのは、熱や衝撃に弱いアルミには影響し、鋼で作られた船体には影響が少なかった、ということかもしれません。

 スタンダードミサイルを始めとして、現在多用されているミサイルは基本的に固体燃料ロケットを使っています。上画像でも爆散した破片が白く発光していますが、これは燃料が燃えているためです。
 固体燃料は酸素を自分で持っていることから、液状・泡状などの消火剤によって酸素の供給を停止しても、燃焼を止めることができません。燃焼にも高発熱を伴うため、冷却しての消火も困難でしょう。おそらく小規模な火災というのは、燃え残った燃料が甲板上に落下したことによるものだと思いますが、これを消化するのは非常に大変だと思います。ただし、量はそれほどでもないと思うので、燃え尽きるまでにそれほど時間は必用としなかったはずです。

 蛇足ですが、固体燃料の内、白煙を引くタイプは、燃料にアルミニウムが含まれ、高温で燃焼するタイプの燃料です。高性能な固体燃料を作るには高精度でアルミニウム粉末を作る技術が必要となります。逆に、最近は赤外線センサに悪影響を与えないために、あるいは敵から発見されづらいように、低排煙な固体燃料も使われてはいます。ただ上画像では白煙が見えており、また高温で燃焼しているので、破片が真っ白に発光しています。


 事故の原因は、SM-2に使用されているMk 104 Mod 2 デュアルスラストロケットモーター(Dual Thrust Rocket Motor)に欠陥があったとのことです。このモーターはThiokol(サイオコール、あるいはチオコール)社、現在のATKランチ・システムズ・グループで25年ほど前に製造されたものだそうです。この会社は様々な固体燃料を製造していますが、死者7名となったスペースシャトル・チャレンジャー号の爆発事故もこのこの会社が製造した固体燃料ロケットに原因の一端があります。
 このロケットモーターを使用したいくつかのSM-2は「戦時限定」の制限が加えられたそうです。つまり、平時の訓練では使うな、ということのようです。
 ミサイル防衛で使用されているスタンダードミサイル3や、新型のスタンダードミサイル6もMk 104を使用していますが、これらは異なるデザインであるため、影響は無いとのことです。

 今回はある程度の高い位置で爆発したため、上部構造物にダメージが出た程度で済みましたし、負傷者もなかったとのことです。
 しかし、もしも見張り台に人間が出ていればかなりの怪我になったはずですし、もっと艦橋に近い位置であればさらに広範囲に被害が広がっていたでしょう。もしかしたらイージスシステムの要であるAN/SPY-1レーダーにも悪影響が有ったかもしれません。
 さらに言えば、万が一、VLSセルの中で爆発した場合、艦の内側に爆風が閉じ込められ、燃え残りの燃料も艦内に残り、周辺のミサイルも高熱にさらされていたかもしれません。そのような事態になってしまえば、1960年台に発生した空母フォレスタルの火災事故のような大惨事になっていたかもしれません。
 そういう意味では、人的被害もなく、修理費も新造に比べれば非常に安く抑えられており、より深刻な事故が発生する前に問題のあるミサイルを発見し、使用に制限を出せたことは、ある意味では幸運とも言えそうです。

 この事故は同盟国で発生した事故、というだけでは済みません。アーレイ・バーク級を原型とした船は、日本でもこんごう型護衛艦、あたご型護衛艦として、現在6隻が就役しています。また、これらの艦艇にはSM-2ミサイルも搭載されています。
 海上自衛隊はあまり実弾演習を行いませんが、それでも皆無というわけではないでしょうし、有事の際にはしっかりと使える状態のものである必要があります。


 個人的に、この事故の事は気になっていたのですが、速報的に騒ぎ立ててるところはあれど、その後を書いているところは見つからなかったので、素人ながらすこしまとめてみました。最初にも書きましたが、何分英語はチンプンカンプンで防衛装備等も素人ですので、間違っていたらごめんなさい。




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