2017年1月6日金曜日

ISSから放出された物体の軌道長半径グラフ

縦軸が20km/div、横軸が5day/divです。データは軌道長半径ですが、離心率が十分に小さいので実質的に地心からの距離として扱っています。グラフの下端が地表0km、上端が地表500kmです。手元にあるデータ量があまり多くないので、8ヶ月分くらいのデータ量です。それでも70機以上があるわけですが。
使用したデータは国際識別符号が98067で始まるすべての物体です。基本的にはキューブサットですね。

一般的に宇宙は地表100kmからと言われていますが、このグラフを見る限りでは300kmを下回ると急激に速度を失い、250kmを下回るとほぼ真っ逆さまという感じです。

このグラフでは左端の高度で2グループに分ける事ができ、下グループはグラフ内でほぼ全てが落下していますし、上グループはほぼ全てが未だに落下していません。
しかし、例外的に上グループで1個が落下し、下グループで1個が落下していません。
上グループで落下した衛星は「CADRA」という3Uサイズの衛星で、4枚のパネルを展開しているため、とても表面積の大きな衛星です。そのため空気抵抗が大きく、早々に速度を失ったと考えられます。
下グループで落下していない衛星は「SPINSAT」で、直径約55cm、重さ50kgで、キューブサットと比べて桁違いに重く、また球体であるために空気抵抗も少ないため、なかなか速度を失いません。といってもすでに300kmを下回っているので、あと半年から1年もあれば落下しそうな気もします。

ちなみに、CADRAは似たような発音の某ラノベに出て来る4つの武器を使うアレとは関係ないようです(ラノベの方はquadraあるいはquatreで「4」の意味)。CADREは「Cubesat investigating Atmospheric Density Response to Extreme driving」の略らしく、無理してつけたような感じがするので、quatreに発音が似るようにつけた可能性はありますが。
日本だとこういう遊びはやりやすそうですね。何かの頭文字を取ってきてDFMという名前にするとか。「闇の炎に抱かれて消えろ!」(再突入時のブラックアウト試験衛星)とか。

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もうすぐ打ち上げ予定の衛星で「超低高度衛星技術試験機(SLATS:Super Low Altitude Test Satellite)」というものが有ります。高度180kmから270kmあたりを周回し、設計寿命は2年以上だそうです。さすがに質量が400kgもあればSPINSATのようにかなり長期間軌道に残ると思いますが、それでも200km未満ではかなり減速すると思われます。
そのため、SLATSにはイオンエンジンが搭載されており、それで加速することにより減速を防ぐようになっています。上のグラフでもISSが時々高度を上げており、これが「リブースト」と呼ばれる高度を維持するための加速ですが、ISSの場合には「化学ロケット」と呼ばれる高推力なロケットを使用しているため見てわかるほどに高度が上がっています。一方SLATSで使用するイオンエンジンはとても推力が低いので、いくらISSに比べて軽量とはいえ、見てわかるほどに一気に加速できるとは思えません。とはいえキューブサットであれば2日で20kmも高度を落とすところをSLATSが高度を維持して周回しているグラフは面白いと思います。

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